京都の剣雄、市川雷蔵と大川橋蔵がそれぞれいま撮影中の映画で、新しい剣法をあみ出し、野心的な立ち回りにいどんでいる。

 雷蔵は大映『眠狂四郎殺法帖』(田中徳三監督)で初めての二刀流を見せた。ラストシーン、少林寺拳法の達人、陳孫(城健三朗)との対決を、鳥取県の砂丘で狂四郎の愛剣無想正宗が静かに円を描く。城の丸ぼうずの頭は日本海の強い反射を受けてまぶしいほど。無想正宗が円月を描き終わり、陳孫は三歩下がってみごとに合掌で白刃を受け止める。その瞬間、狂四郎の脇差が胴を走る。拳法の達人でも円月殺法には勝てなかったという、大クライマックスだ。正確には狂四郎の二刀流といえないまでも、思わず脇差を抜いたというところは「宮本武蔵」によく似ている。

 雷蔵は「初めて二刀流を使ったが、腰に差した二本の剣をじゅうぶんに活用するという点で、納得のいく立ちまわりですね」ともらしていた。

 『右京之介巡察記』(長谷川安人監督)で橋蔵が使う秘剣は、神変無想流道一文字。簡単にいえば敵を切ったそのままの姿勢から、刀の切っ先を返して、つぎの攻撃に移るという、たいへんムダのないスピーディーな剣さばき。

 映画の上では、橋蔵の右京之介自身があみ出すことになっているが、実際は殺陣師の足立伶二郎氏、長谷川監督、橋蔵の三者が協議の上で考案したもの。

 この剣を使うには、腰の強さが重要な条件だが、橋蔵にはその心配はない。重心が低く、腰の切れもいいと、足立氏も橋蔵の立ち回りには信頼をおいている。(西スポ 10/29/63)