大映京都『眠狂四郎円月斬り』(監督安田公義)は、市川雷蔵のヒットシリーズ第三作で、前二作とも凄烈な殺陣と濃艶なエロチシズムで人気があった。このほど撮影した、猛火の中での斬り合いは、この映画最大の見せ場で、まかりまちがえば出演者が大ヤケドをするという、真に迫ったすさまじい場面だ。

 雷蔵ふんする狂四郎が、単身将軍のおとし種、片桐高之(成田純一郎)に挑戦。江戸郊外の川原で、高之一味の剣士たちから火と矢とヤリの包囲網を受けて、孤軍奮闘するが、例によってバタバタときり倒すくだり。撮影は川原のセットで、焼打ちにあい、くずれ落ちた橋の残骸が燃え盛る中で、狂四郎の円月殺法が血しぶきをあげるところを、三日がかりでカメラにおさめた。

 リアルな演出にこる安田監督の撮影は、一カットごとに石油をふりまいて、セットを燃やしては消す、手のこんだもの。そして、本番では扇風機で炎をあおり、猛火を背に真剣な表情で刀をかまえていた雷蔵が、思わず「アツッ」と悲鳴をあげて逃げ出すしまつ。「キビシイな」を連発していた。

 さらに、雷蔵に相対する成田は、刀をかまえているうちは火に遠く離れているからよいが、いざ斬り込んですれちがいざまに斬られ、火の中へ飛び込む場合、タイミングをあやまると大ケガをする。頭の上から材木が燃え落ち、火の中へのまれてしまうというたいへん迷惑?な設定で、人形ではどうしても実感が出ないため、悲壮な覚悟で飛び込みとなった。幸い、たいしてケガもなく無事とり終えたが、とにかく俳優もスタッフも油煙で真っ黒になった、たいへんな撮影だった。(西スポ 05/18/64)