大菩薩峠・完結篇

1961年5月17日(水)公開/1時間38分大映京都/カラーシネマスコープ

併映:「桜田門」(西山正輝/長谷川一夫・浦路洋子)

製作 永田雅一
企画 久保寺生郎・南里金春
監督 森一生
原作 中里介山
脚本 衣笠貞之助
撮影 本多省三
美術 西岡善信
照明 中岡源権
録音 林土太郎
音楽 塚原哲夫
助監督 池広一夫
スチール 西地正満
出演 本郷功次郎(宇津木兵馬)、中村玉緒(お豊・お銀・お浜)、小林勝彦(がんりきの百)、三田村元(駒井能登之守)、島田竜三(神尾主膳)、近藤美恵子(お玉)、丹羽又三郎(宇津木文之丞)、矢島ひろ子(お徳)、阿井美千子(お絹)、見明凡太朗(裏宿の七兵ヱ)
惹句 『心眼冴えるか龍之助の魔剣悲願実るか兵馬の正剣』『復讐が、愛憎が、殺気が、静寂を破って大菩薩峠に雌雄を決す』『名作の全貌をこの一篇に結集いよいよ波乱の最高潮』『魔の大菩薩峠に最後の対決竜之助の妖剣、兵馬んお快剣が風をはらんで波乱万丈』

      

[ 解説 ]

 『大菩薩峠』の第三部・完結篇で、中里介山の原作を、一・二部に続き衣笠貞之助が脚色し、三隅研次に代って『おけさ唄えば』の森一生が監督した。撮影も『おけさ唄えば』の本多省三。

☆『大菩薩峠・完結篇』(大映スコープ・総天然色)は、中里介山の名作をベテラン森一生監督が演出する格調あり、しかも痛快な娯楽時代劇であります。

☆妖剣音無しの構えで殺気みなぎる机竜之助と、宿怨をはらさんとこれを追う青年剣士宇津木兵馬の激しい対立が、いよいよこの篇でクライマックスを迎えることになっています。

☆三たび机竜之助に扮する市川雷蔵は、盲目になって、ますます冴えわたる竜之助の妖気を演技で表現しようと工夫をこらしています。これに対して中村玉緒は、この作品で、お豊、お銀、お浜の三役を演じ分けることになっており、その熱演が期待されます。

☆一部、二部と三隅研次監督によって製作されてきましたが、完結篇は森一生監督が起用されました。バトンタッチをうけた森監督は、文芸作品的ムードで重厚さをだし、娯楽作品としての面白さを合せてだしたいと意欲をみせています。

☆スタッフは製作に永田雅一、企画に久保寺生郎・南里金春、脚本に衣笠貞之助、美術に西岡善信、照明に中岡源権、音楽に塚原哲夫、録音に林土太郎と、ベテランが森監督中心にがっちりとスクラムを組んでいます。

☆キャストは、机竜之助に市川雷蔵、宇津木兵馬に本郷功次郎、お豊、お銀、お浜に中村玉緒、道中師がんりきの百に小林勝彦、甲府勤番支配駒井能登守に三田村元、流しの女お玉に近藤美恵子、生花の師匠お絹に阿井美千子の他、丹羽又三郎、井上明子、島田竜三、見明凡太朗らがそれぞれ適役に出演しております。(大映京都 作品案内665)

 竜神の滝の断崖から落ちた盲目の竜之助はお豊の助けで、いまは伊勢大湊の与兵衛の材木小屋にかくまわれていた。古市の廓に身を沈めたお豊は、病に侵されついに自害した。その遺言状と金は、流しの女、お玉に手渡された。

 挙動不審をとがめられたお玉は役人に追われた。そのときお玉はお豊からあずかった金を落してしまったが、手紙だけはしっかりとにぎりしめ、与兵衛の材木小屋にたどりついた。

 かすかな灯火の中に机竜之助が端然とすわっていた。お豊の死を知った竜之助は、少しの動揺もみせず、冷ややかに、歌う者は勝手に歌い、死にたい者は勝手に死ねとつぶやく。

 この模様を怪盗裏宿の七兵衛がハリの上でみつめていた。虚無僧に身をやつして東海道を東に向かう竜之助は、浜松で生け花の師匠お絹と出会う。このお絹を道中師がんりきの百がねらっていた。

 がんりきの百の策略にかかって山中におびきだされた竜之助は、さすがに百の片腕を切り落した。だが、ほっとしてよりかかった道標が根元から折れ、谷底へ落ちていった。

 草むらに倒れている竜之助をすくったのはお徳であった。お徳の介抱で意識を回復した竜之助は、彼女の子蔵太郎を見て、不運の星に生まれついたわが子、郁太郎の身に思いをはせるのだった。

 甲府勤番となって湯元にやってきていた、旗本神尾主膳は土豪望月家から軍資金をせしめようと画策、婿の清一郎をめしとった。強引なゆすりに村中は怒りに満ちたが、なにしろ相手が悪い。お徳からこれを聞いた竜之助は、主膳の宿に単身のりこんだ。幽鬼のような盲目の竜之助の出現に一瞬たじろいだが、そこはあばれ旗本、竜之助に立ち向かった。竜之助の剣は無残に旗本たちを倒した。だが、神尾主膳の短筒は竜之助の胸元をねらっていた。唐丸駕籠にのせられた竜之助を追う宇津木兵馬、七兵衛、お玉たちの姿があった。

 甲府についた主膳は、竜之助のすご腕を利用しようと、一室に幽閉していた。血にうえた竜之助は夜な夜な里に姿を現わし、辻切りを行なった。このウワサを耳にした兵馬は、てっきり竜之助のしわざとにらみ、宿命の対決に血をたぎらせた。

 一夜の、主膳のもとに紫ちりめんの女頭巾で顔をかくした有野村の馬大尽の一人娘お銀がおとずれてきた。主膳は色と欲からお銀に縁組をせまった。だがお銀の顔半面のむごたらしいヤケドのあとをみるや、思わず手の力をゆるめた。そのとたんに身をひるがえしたお銀は、竜之助の部屋にのがれ助けを求めた。

 盲目の竜之助は、追いすがる主膳の前に立ちはだかった。鬼気せまる竜之助の邪魔だてに、さすがの主膳もたじろぎ、お銀をすきなようにしまつしろと叫んだ。

 お銀の声にお豊、お浜の面影を思いだした竜之助は苦悩する。これをやさしくいたわるお銀。二人の人間の間にほのかな愛情が流れる。血のさわぐ竜之助は、甲府勤番支配駒井能登守を襲撃したが、その人格にうたれて慄然とする。

 お銀とともに大菩薩峠に舞いもどった竜之助は、「廿一、酉の女」と書かれたお浜の墓をみつけ、感慨にふける。うらめしげな文之丞が、お浜が、走馬灯のようにかけめぐる。苦悩にうちひしがれる竜之助を強く抱きしめるのはお銀だった。

 おりからの豪雨に笛吹川は氾濫。村人は恐怖に包まれた。与八の世話で立派に成長している郁太郎を求めて、竜之助は不自由なからだにもめげず、雨中をさまよう。それを追いつめる兵馬。

 氾濫した笛吹川の濁流は、刻々と水かさを増す。「郁太郎!」わが子の名を絶叫する竜之助。兵馬の復讐の剣がじりじりと竜之助にせまる。

(サンスポ・大阪版 05/07/61)

[ 略筋 ]

 竜神の滝の断崖から落ちた盲目の竜之助はお豊の助けで、伊勢大湊の余兵衛宅にかくまわれていた。お豊は古市の廓に身を沈めたが病に犯され自害した。竜之助あての遺言状と金は流しのお玉に手渡された。挙動不審を咎められたお玉は役人に追われ金は落してしまうが、手紙だけは竜之助に渡すことができた。

 裏宿の七兵衛はやっとのことで竜之助を探し出すが、竜之助は生花の師匠お絹と発った後であった。お絹の色香を狙うがんりきの百は山中で二人の駕籠を別々に引き離してしまった。怒った竜之助は百の片腕を切り落すが、谷底に落ちてしまう。それを救ったのはお徳であった。竜之助はお徳の子蔵太郎を見てわが子郁太郎の身に思いをはせるのだった。

 甲府勤番となって湯元にやって来ていた旗本神尾主膳は、土豪望月家から金を捻出しようと画策、婿の清一郎を召捕った。お徳からこれを聞かされた竜之助は、清一郎を救い出すが、自分は主膳の家に捕われた。主膳は竜之助の腕を見込んで、甲府勤番駒井能登守の暗殺を条件に屋敷へかくまった。

 その頃兵馬と七兵衛の二人は竜之助の足取りを、確実に追っていた。主膳は有野村の馬大尽の一人娘との縁組を強制していた。一夜、お銀を屋敷に連れ込むがお銀は竜之助に救われた。お銀は顔半面むごたらしいヤケドの跡を作っているため、盲目の竜之助にかえって愛情を持った。竜之助もお銀の声にお豊、お浜の面影を思い出していた。竜之助はある夜、駒井能登守を襲うがその人格にうたれて討つことができなかった。

 お銀とともに大菩薩に舞い戻った竜之助は、お浜の墓地をみつけて愕然とした。それからというものは、竜之助の辻斬りが毎夜のように続いた。辻斬りの噂を聞いて兵馬も大菩薩に帰って来た。

 折柄の豪雨に笛吹川は氾濫、村人は恐怖に包まれ続々と退避していた。与八の世話で立派に成長している郁太郎を求めて竜之助は雨中をさまよっていた。そこへかけつけた兵馬。竜之助との宿命の対決となった。だが、足元からくずれだす笛吹川の濁流のため、竜之助は濁流の中に押し流されていった。( キネマ旬報より )   

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『大菩薩峠』全20巻は、富士見時代小説文庫、ちくま文庫、角川文庫等で読める。

シリーズ映画 、その他のシリーズ”大菩薩峠参照。

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