
大映京都の正月作品『女と三悪人』(井上梅次監督)のスチール撮影が十八日、山本富士子、市川雷蔵、勝新太郎、そして他社出演ははじめての大木実を加え、にぎやかなに行われた。
江戸末期の退廃した時代の"泥棒横丁"と呼ばれる両国、盛り場に、きょうのことしか考えない前科者雷蔵、にせ金作りの悪坊主勝、ニヒルな浪人者大木の三人がたむろし、美しい女役者山本をめぐって恋のサヤ当てを演ずるというのが大体の筋立て。
これまでつき合い程度の共演が多かった山本、雷蔵、勝は、シノギをけずる文字どおりの共演は『花頭巾』以来六年ぶり。一見大店の若だんなのようないでたちで
雷蔵が「勝ちゃんはいつも悪党づらで芝居してるからいいが、僕は根が善良だから悪党に見えるかな」
なまぐさ坊主姿の勝も負けてはおらず「そういうやつに限って悪人が多いんだ」
女役者の艶っぽいスタイルで山本が「きょうはスチール撮影だからサヤ当てはそのくらいにしたら・・・」
と仲裁役を買って出るなごやかさだ。
そばでニコニコしながら見た大木は「大映ははじめてだからすべては皆さんに手をひっぱってもらうだけ、よろしくお願いします」
と神妙にあいさつしていた。
この題材は、現在を感じさせるものがあるからフランス映画『天井桟敷の人々』日本版という形にしたい。というのが初めて時代劇を手がける井上監督の弁だった。(日スポ・東京11/19/61)

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