後援会会場でファンに挨拶する雷蔵さん

近視の魅力

 「理想的で毒舌家なのに、反面ユーモアがあるんですよ。私がはじめて雷蔵さんにお目にかかったのは『踊子行状記』の時。お互いに最初の共演のことでもあり、いささか気取っていて雷蔵さんは貴公子然とすまし、私もすましていました。

 それがある日ロケーションに行くバスの中で雷蔵さんをはじめ勝さん、林(成年)さんたちと“早口言葉”をやろうということで、やり始めたんですが、どうも私は下手クソで口が回らないです。何回言い直してもダメで、皆に大笑いされました。

 中でも一番大きな口を開けて、一番大きな声を出して笑ったのが雷蔵さんなんです。以来、お互いにすましても気取っても通用しなくなりました」 と山本富士子も言っている。そして、三隅研次監督も、こう言う。

 「雷ちゃんほど、何事にも鋭く観察をし論理的にものを考える俳優さんは珍しい。また人を問わず、場所を問わず堂々と自分の意見を開陳して、納得のゆくまで譲らない剛直さは見事なぐらい。

 また、雷ちゃんの魅力はいろいろあるが、ボクは目の美しさにひかれる。スクリーン上のクローズアップで、キリッと苦み走った男ぶりを一段と輝かせているのは、強い光をたたえた大きな目だ。なぜ、雷ちゃんが、平常と違ってこんなに大きく見え、澄んで美しく、そして光をたたえるのだろうか。

 ボクはこう思う。それは幸か不幸か雷ちゃんは強度の近視だということだ。近視の人の目は美しいと学理上からも説明されているが、−そんなところに、彼の目の魅力の秘密が隠されているのではないかと」

 ともあれ、論理的に役を考え、論理的に計算して演技する。市川雷蔵は日本でも珍しい、大人の俳優なのである。

 京都で撮影が終ると東京の雑踏の中に出てきて、近代感覚を身につけようと努力している。この仕事と生活をはっきり割り切り、仕事に情熱を燃やす近代青年市川雷蔵に、早く素敵なお嫁さんを迎えてやりたいものである。