子供に強い錦之助、千代之介と共にドル箱
時代劇の東映というほど、東映は時代劇が多く、京都は地形的な有利さも手伝って、遂に現代劇の製作はやめているし、東京でも一時は製作中の数本が、全部時代劇だったなんてこともあったほどである。
目下製作中のものは、内田吐夢の第一回作品『血槍富士』と『侍ニッポン』、『風雲将棋谷』、『月笛日笛』、『やくざ若衆』といったところがあって、いずれも講談調のもので、対象は子供。こうした子供に大人も十分加わって、結構楽しんでいるのだから、東映にとってはわが世の春で、ここ二、三年の間で『大菩薩峠』、『笛吹童子』、近くは『紅孔雀』などが大ヒットしている。
一時は隆盛を極めた千恵蔵、右太衛門ものも、観客の対象の変化とともに、中村錦之助、東千代之介、千原しのぶと移って、これら新人の勢はものすごく、ブロマイドの売れ行きも最高をしめしている。つまり錦之助、千代之介の若さが、子供達の心にぴったりしたというわけで、「錦之助って強ええな」という声を巷できくのはその例であろう。この二人に東映は依存しているし、紅孔雀の成功で企画中のものに、『浮寝丸』(三部作)という姉妹編があり、『嵐の千代田城』もあるといった具合で、時代劇のシリーズものも昨年にもまして、多く製作されることになっているらしい。
天炎色もの三本 浩吉、美空は絶対コンビ
京都にスタジオをもっている松竹では、最近大分時代劇に肩を入れ出した。『花の生涯』、『忠臣蔵』、『濡れる権八』、『傳七捕物帖刺青女難』など、興収のトップは現代劇より、時代劇の方に多い点は、企画にあたって相当な影響を及ぼしている。
大船の現代劇を中心にしてはいるものの、京都の発言権も強くなるはずで、目下製作中のものでは天然色作品三本、『修善寺物語』(中村登監督)、『絵島生島』(大庭秀雄監督)、『鳴神』(大曾根辰夫監督)があり、企画準備中のものでは、『青銅の基督』(渋谷実監督)、「傳七シリーズ」(これは一作ごとにヒットしている)、「八州遊侠傳シリーズ」、『よいどれ囃子』(滝内康雄監督)、『喧嘩奴』(福田晴一監督)、『修羅学園』と派手なスケジュールが組まれていて、総じて真面目なものが多いのは買える。時代劇のスターとしては松竹では、高田浩吉の右に出るものがなく、浩吉と美空ひばりが出れば絶対なのだそうだ。北上弥太郎も、一時ほどの人気はないが、やはり旗本なんかやらせれば光る。
野心的大作『新平家』 長谷川一夫の独り舞台
東映、松竹同様に、スタジオをもつ大映は、娯楽作品と芸術作品としての時代劇との差が大きすぎるし、最近は輸出向きの作品を意識してつくっているらしく、『羅生門』、『地獄門』が国内外とも名をあげたことも、この社の方向をかえた原因になっている。娯楽作品では、『浅間の鴉』、『花の三度笠』、『知らずの弥太郎』、『怪猫有馬御殿』なんかは、見事ヒットしたというから、時代劇がますますはばをきかせるようになるわけだ。
目下製作中のものでは、『花ざかり男一代』(森一生監督)、『麝香屋敷』(吉川英治原作、三隅研次監督)があるし、準備中のもので大作は、天然色で吉川英治原作『新・平家物語』(溝口健二監督)があり、大映が時代劇スターとして売出そうと躍起になっている、市川雷蔵の「次男坊シリーズ」があり、勝新太郎の『天下を狙う美少年』も製作することになっている。俳優は長谷川一夫が一人舞台で、まだ結構儲かるとはいうものの、スター不足に悩み、後進として勝新太郎、市川雷蔵に期待しているようである。
キャストに魅力が乏しい
京都にスタジオがなく、時代劇製作も必要ながら、思うにまかせないでいるのが東宝、新東宝、日活の三社で、東宝では、現代劇に生命を托している。それでも『右門捕物帳献上博多人形』、『人形佐吉めくら旅』を製作中だし、『宮本武蔵第二部』、『鞍馬天狗』も企画にのせて対抗しているが、『七人の侍』なんていう特殊な作品以外は、同社のものはよい成績を上げていない。
新東宝も企画に一貫性がなく、成績不振をかこっていたが、東映の子供対象の作品に目をつけ、昨年中頃から、時代劇に力をいれはじめ、『新州天馬侠』、『忍術児雷也』といったものを製作したし、昨年八月に作った『妖棋傳』二部作がヒットしたというわけで、ここでも時代劇が立派に社運を救っている。『隠密若衆』(渡辺邦男監督)、『長脇差大名』(加戸野五郎監督)を製作中である他、企画準備中のものには『銀蛇の窟』天然色もので『美女決闘』というのがある。すべてのスターに不足している新東宝では、大映の勝新太郎の兄若山富三郎を、時代劇スターにしたてようととしているといった具合で、時代劇への関心は益々強くなるばかりである。
製作会社のニューフェイス、日活は、出発の作品が『国定忠治』でヒットしたことで、新国劇と提携した時代劇が多く、『沓掛時次郎』、『平手造酒』も新国劇が出演している。現在はマキノ一家が、『秋葉の火祭』を製作していて、これが一本だが、企画準備中で今年度製作予定のものは多く、『森蘭丸』(佐伯清監督)、『大利根の対決』(滝沢英輔監督)、『落日の血闘』(野口博志監督)の他二、三本はあるらしい。俳優はいないといった方が当るほどいない。だから新国劇と提携するか、中村扇雀を使うかぐらうで、キャスティングの方にはあまり魅力がないのが難点であろう。 |