一方雷蔵は、彼の最初の演技開眼ともいえる『新・平家物語』の主人公青年清盛が叫んだ「運とは待つものではない。俺のこの手で掴み取るのだ」という言葉通り、大変意欲的な青年スターで、その気性が演技のハシハシからうかがえる。『炎上』で演技賞を得たのもその意欲の賜物で、どの作品でもキビキビと張りのある演技の見られるのは快い。それに仕事に対する野心あるいは冒険心は橋蔵に見られない長所で、例えば彼は年間三本は自分の企画がやれるという一札を大映からとって、すでに井原西鶴の『好色一代男』山崎豊子原作の『ぼんち』(これは『炎上』につぐ現代劇)の映画化を決定したりして、再度の演技賞を狙うハリ切り方である。
ともあれこの二人は、歌舞伎育ち、そして現在の地位などから互いに相ゆずらぬ好敵手であり、また将来の時代劇を背負って立つ期待の双璧でもある。

『炎上』 中村玉緒と
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