グンと上った雷蔵株

堅実な修業が実を結ぶ

 最近、雷蔵がとみに上って来た。『炎上』での主演が大いに買われている。そして彼自身も大いに自信をつけて来たようである。東映の錦之助や千代之介ほどの爆発的な人気の時代こそなかったが、三年間の堅実な修業が見事に実を結んだのであろう。

あでやか“弁天小僧”

大いに買われた『炎上』

◇・・・大映京都撮影所のセットに雷蔵を尋ねると、京都市民映画祭の最優秀作品賞の『炎上』を代表して表彰された興奮がまだ残っているような熱っぽい口調で、「今年は何だかグンと大きくなったような気持です。あそれに、映画が楽しくて演技の面でも自分のパートがちゃんと理解出来て、無理なく表現出来るようになった」と語っているが、この言葉は彼が単なる人気スターでない証拠でもある。

映画スターには痴呆的な人が多いし、又次第にそうさせられて何時に間にか脱落して行く人が多い中に、雷蔵は一年一年成長を確めて歩いて来た、得がたいタレントと言えよう。

◇・・・セットでは『弁天小僧』の浜松屋の場面を撮影中であった。劇中劇風に伊藤大輔監督の考案によって浜松屋のユスリ場面だけを、歌舞伎の舞台そのままに表現している。あでやかな武家娘に扮していた雷蔵の弁天小僧が、万引を見破られて片肌脱いで例の、“知らざぁいって聞かせやしょう”のサワリの場面である。雷蔵は「歌舞伎にいたらとても僕らのような若い者に弁天小僧などという大役を演らせてはくれません。これも映画の一つの利点ですね。今度はこの場面だけ父(市川寿海)に来て貰っていろいろ教えて貰いました。歌舞伎調といっても圧縮して映画的にクローズアップなどもあるので、歌舞伎そのままではないんですが、映画と舞台の両方の味を味わさせてもらいました。伊藤先生は思い切り楽しい時代劇をといわれていますし、僕もオーバーな位の所を覚悟してやっています」と仕事が楽しくて仕方がないという口吻であった。

 『炎上』の経験と今後の抱負を聞くと、

 『炎上』は本当に勉強になりました。僕の映画俳優の歴史で、たしかに最も印象的な仕事の一つになるでしょう。この映画の成功が嬉しかったのは勿論ですが、何よりの経験は映画が理解出来るようになったということです。それに反響が大きかったのも驚異的でした。大変な励みになりました。自信?まあそういうものの身についた感じでしょうね。というのが、今までよりも一層企画などに積極的になって来たことが、自分でも分かります。今度は社長にお願いして企画が決まった『好色一代男』に打ち込む予定で、来春早々にかかれると思います。

 それまでに正月映画を一本ほど撮りますが、その間に依田義賢先生の脚本も完成するだろうと楽しみしています。西鶴の原作通りではないようですが、世之介の青年時代に区切って、金と美貌で女を自由にした男の人生観、真実の人間性というものに、触れてみたいと思っています。もう今から、西鶴と首っぴきです。と瞳を輝かせながら語っていた。

 長谷川一夫の次代の大映時代劇のキングは雷蔵だと大方の見方は決ったが、願わくば単なる時代劇スターでなく、俳優としての可能性を拡げて見せてほしい。

(ファンお手製の切抜帖から)