| 言いたいことを言う俳優 昭和二十九年八月、関西歌舞伎のゴタゴタを機に、さっと映画に転進した。デビューは田坂勝彦監督の『花の白虎隊』。そのとき雷蔵はズバリ言ったもんだ。 「歌舞伎は若くてはあきまへん。六十歳を越えるとなんでもほめてくれる。が、映画は若うないとあきまへん。そやから若い間に映画で働いて、年寄ったら歌舞伎へ帰りますのや」 だいたい、雷蔵ほど「言いたいことを言う俳優」で通っている俳優はいない。そういう性格なのである。言うだけならだれでも言える。 「ボクがこういう映画をぜひとってもらいたいと言っても、なかなか会社はウンと言わない。どうしてでしょうね」 と頸をかしげる俳優は案外多い。しかし、その企画を企画部長から製作部長、はては社長にまで堂々と主張する俳優はきわめてまれだ。 ところが、それを実行したのが雷蔵なのである。企画作品は西鶴の『好色一代男』と山崎豊子の『ぼんち』。雷蔵主演で本年中にとることがすでに確定した。 「だって、自分のこうと思ったことなら、だれに言ったってかまわんじゃないですか」 なにをそんなにフシギがるんだ・・・とケゲンな顔をする。 もっとも、雷蔵には、自説を強硬に押しとおして映画にした前例がある。三島由紀夫原作の「金閣寺」、つまり雷蔵を第一線スターに押し上げた『炎上』(監督市川崑)がそれだ。しかも、ブルーリボン賞をはじめ、第二十回ベニス映画祭の最高演技賞、イタリアのシネマ・ヌオボ誌映画賞の最優秀男優賞などの主演賞をかせいだとなると、これは前例としても絶大な威力があるわけだ。 「『好色一代男』は昨年からの持ちこしですが、ともかくうれしいですよ。今年はこれ一本に賭けています。近松と西鶴を比べると、近松はどちらかといえばウェットだし、西鶴は反対に大変ドライな作家だと思います。その西鶴のドライさが増村保造監督の演出と共通点があると思うので、ボクが増村さんに撮ってもらいたい理由もそこにあります。モダンで新鮮な感じをだしてもらえれば、面白いとおもいますね。 世之介については、脚本を読むまで白紙の状態にしておき、へんなイメージは作るまいと思っています。心配なのは、映画全体がお色気攻勢なので、この作品がお色気と混同されやしないかという点です。お色気は味付け程度で、主題は人間のすべてを変化させてゆく“金”の問題ですから・・・。 それから、相手役の女優さんがだれになるか、これは重大ですね。おそらく京マチ子さん、山本富士子さん、若尾ちゃんみたいな大スターが選ばれるとは思いますが・・・。関西ものだから、あまりチャキチャキした感じの女優さんは困りますね」 と、雷蔵の『好色一代男』にかける熱望は大きい。 仕事の話になると、彼は能弁だ。何を考えるより、仕事のことを考えているときが一番楽しい、とも言う。 |