理論家で毒舌家でユーモラス

 「雷ちゃんの口の悪いのは有名。でも、それが不思議に当を得ているので、いったん怒っても、あとでなるほどなアと感心させられちゃう。歯に衣をきせずズケズケ言われることも、かえって雷ちゃんの魅力になっているんじゃないかしら。だから以前は、顔さえ見れば、にくまれ口をたたいてケンカをしていた犬猿の仲。でも、私が病気をすると、一番さきにお見舞いに来てくれたりする親切なかたなんんです」

 と、『美男剣法』や『鬼火駕籠』で共演した嵯峨三智子は、彼の素顔を語っている。

 雷蔵の毒舌ぶりは、あまりにも有名だが、彼が後援会で行なったファンとの一問一答を録音してみよう。

− 雷蔵さんご自身の性格について、どう思いますか。

  の質問にはすかさず、 「あなたは僕の性格を、どう思っておりますか」 と、相手を絶句させてしまうし、

− 年賀状にサインがしてありましたが、あれは雷蔵さんのものですか。

   「それを聞いてどうするんですか。僕のでなければ・・・」 とズバリ言う。

− 雷蔵さんはラブシーンが下手ですが・・・。

   「だいたいラブシーンというものは人に見せるものではないでしょ。それを人に見せるようにやる。だからむずかしい」

− 大映の企画が悪いと思いますが・・・。

   「じゃ、あなたは私にどうしろとおっしゃるんですか」

 そのときに応じてスルリと逃げたり、逆襲したり、ドライな近代青年なのである。

 もう一つ実例をあげよう。南海の杉浦忠捕手がある日、セットを訪問した。そして、雷蔵と語り合った。

 

雷蔵= 刀とバットとどちらが重いですかねえ。
杉浦= そうですね。やはりバットのほうが重い感じがしますよ。
雷蔵= バットのほうがやはり軽いんじゃないでしょうか。刀ってものは、なるほど先から手前まで切れるように
     なっていますが、ボクは撮影で、日ごろ扱っていると、どこででも切るというわけにはいかないものだと思
     いますね。だいたい刀で切れるのは、先の三寸ぐらいでしょう。それより手前になると、むしろたたき切
     るという感じで、バットと同じようになぐってしまうのでしょうね。

 こんなぐあいである。理詰めで押して、自分の体験から割り出し、一般の説に反発するという行き方。彼と語り合った者すべてが言う、彼の印象である。