大映色彩映画の優秀性は『地獄門』のグラン・プリ受賞により実質的に全世界から確認されその名声は、「色彩映画の革命来る」とまで喧伝されるに至った。この与望をになって本年度下半期に放つ『月よりの使者』 『千姫』の二大作は、発表の暁には前二作に倍加する話題をかちとることであろう。

 京都撮影所で製作中の問題作『千姫』は、既報の通り世界最高の技術をかけて鋭意進捗中であるが、(木村恵吾監督、京マチ子、菅原謙二、進藤英太郎、東山千栄子出演)この程カメラはいよいよ問題の吉田御殿に突入、連日第四ステージ「吉田御殿、大広間」に絢爛の撮影をつづけている。このセットを覗いて誰でも感じることは、小道具の調度の美しさだ。そして、小道具に限らず、欄間、柱の金具に至るまで、あらゆるものが金色サンゼンたるもの、これが大映の技術によると、見た目以上の美しさに映るのだから大したもので、これは大映独得の技術なればこそで、さればこそ、大映は今回、イーストマン・カラーの呼称を「大映カラー」と呼ぶことになったものである。

 この世界一のカラーによって描かれる千姫が、真実の愛情を求めて身悶えする悲恋大作は、全く、世界の映画ファンが注目していると聞くが、当然のことであろう。このセットには、臍の尾を切って初めて時代劇に出演するというので張切っている菅原謙二が、坂崎出羽守の家来湯浅新六に扮して待機している。彼は、この役のために、特に京都撮影所演技課所属でもと俳優学校時代の親友越川一君に、指導役について貰った。

 「何しろ、全然、時代劇は何も分らないんですからね、いや扮装にはそんなに困らないんですが、例えば刀の差し方、衣裳のつけ方、腰紐の結び方、いろいろ六カ数の約束があってね。それに困るんです」

 というが、どうして彼の姿は堂々たるものである。この菅原謙二、東京スタジオでは『月よりの使者』にも出演しているので、天然色映画二本のかけ持ちで忙しいのなんの、彼、これをひねくって「天然色男、即ち色男は忙しい」は分かったような分らないような洒落。

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