淫蕩な女として今日まで伝われてきた吉田御殿の女主人千姫。彼女の生涯は、はたして伝えられるようなものであったか。七歳にして豊臣家に人質として秀頼の下に嫁し、落城とともに家康の下に帰り、再婚の夢も潰えた美女の宿命的な悲劇、そこには金でも、権勢でも及ぶことのない女の命の慟哭があったのだ。
生涯たった一回でいいから真実の恋をしてみたかったと絶叫する千姫の心には全女性が泣く、大映得意の総天然色映画である。
絢爛たる色彩の中に薄幸の美女の奏でる胸うつ悲恋、京マチ子が体当りの演技で切々と描く千姫の悲劇相手役には珍らしくも時代劇初出演の菅原謙二が当って、撮影は愈々快調である。
菅原の役は、坂崎出羽守(山形勲)の部下湯浅新六で、京マチ子の千姫を炎上中の大阪城から救い出し、主人の出羽守が千姫を恨んで自決した後、この出羽守の恨みを晴すために、千姫の吉田御殿へ忍びこむ内、いつしか当面の敵千姫と熱烈な恋におちいるというドラマチックな役柄だが、このストーリーを縫って、冒頭の大阪夏の陣、吉田御殿内、そしてラストと、数カ所の立回りがあるので、この殺陣のリハーサルが必要。
柔道はお手のものだが、剣術の方は全然の素人の菅原、バッタバッタと水もとまらぬ殺人を見せる為にこの所、エイ、ヤッと木剣を手にして寒稽古ならぬ暑稽古に大汗をかいているが、器用な彼のこと、完成の画面では溜息三斗の立回りとなって魅力倍加は必定である。
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